VIPとの出会いでゾッとした海外でのゴルフ
仕事の関係でシンガポールに住んでいたことがありますが、そこはとても小さな国ですのでゴルフ場の数も少なく、メンバー以外が週末にラウンドするにはかなりの料金を支払わなければなりませんでした。そんなことから、クルマで1時間以内で行くことが出来、料金的にもシンガポールの半額以下で出来る隣の国、マレーシアでゴルフを楽しむ日本人はとても多く、私も友人たちと月に2回程はそうしていました。
マレーシアでのゴルフ
朝クルマで自宅を出発し、何人かの友人達をピックアップして国境に向かい、そこで出国の手続きをしてからマレーシアに入国しますが、その際にはパスポートに出・入国各1個のスタンプが押されます。そして帰りにも同じように2個のスタンプが押されますので、多くの日本人ゴルファーのパスポートはシンガポールとマレーシアのスタンプだらけで早くページが埋まってしまいます。
シンガポールに隣接しているマレーシアの州はジョホール州ですが、そこには幾つかのゴルフ場があります。しかし、プレイをしているのはシンガポールからの日本人や韓国人、そして西洋人たちが多く、マレー人はそれ程多くありません。当然キャディーはマレー人なのですが、男性が多いのが日本のゴルフ場との大きな違いです。そんな男性キャディーは日本人客の多さからカタコトの日本語を話す人も少なくありません。
その日のキャデイーはかなり日本語が出来るようで、私の友人と軽い冗談を言い合いながら笑顔でラウンドしていました。ところが何ホール目かのティーグラウンドに上がった時でした。突然そのキャディーが「ちょっと待って、後ろからVIPが来るので待って」と真顔で叫んだのです。
現れたのはまさかの超VIP
前方にまだ前の組の人がいるから打ち込まないように待って、と言うのなら分かりますが、何故後ろの組が来るのを待たなければならないのか、と私達は疑問に感じていました。するとそのキャディーが「VIPはこの州の王様」と言い、「王様が来たら追い越しします」と言ったのです。後に聞いたのですが、その王様とはスルターンと呼ばれる州の君主であり、後の国王に選出される可能性があるVIPとのことでした。
そのVIPと取り巻き達ご一行様は、サッと180ヤード程のティーショットを打ち、私たちに会釈をして過ぎ去っていきました。暫くして私の友人がキャディーに「さ、打とうか」と言うとキャディーは「まだ駄目です、もしも打ち込んだらお付きの人に殺されます」と言い、ご一行様が見えなくなるまでは絶対に打たないようにと両手を広げたのです。その真剣な顔から、それが決して冗談ではないことを悟り、ゾットしてしまいました。